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「与えられている この一度の人生」
 ― 天から頂いているこの人生に感謝 ―

慶應連合三田会会長

 麻生泰

 

 神奈川通信三田会創立55周年、誠におめでとうございます。

 通信教育課程で学ばれた方々、そして現在も学ばれている方々は、働きながら、介護をしながら、或いは子育てをしながらという日々の生活の中で勉強をされているケースが多いと伺いました。いくつかの課題や難題テーマを持ちながらの学習時間の確保には、非常にエネルギーが必要だと想像します。通学課程で学んでいた私には想像がつかないご苦労、ストレスを含む多くの負担を感じていたことと思います。

 「与えられている この一度の人生」という気持ちを、私は頭に入れて動いています。自らが取ってきた人生でもなければ、買ってきた人生ではありません。両親、神様、ご先祖様からの頂き物であり、かつ現在進行形であるので、新しい目標に向かって日々のパターンを作り替えることも可能ではあります。ただしこの人生は一度だけのチャンスです。この平和な日本で過ごせる現実の有難さを忘れず、天から頂いているこの人生に感謝をして頑張ることを心に刻み込んでいます。天に昇ってしまえば戻ってくることが出来ない一度きりのチャンスであり、現在進行中であるという現実の中に居ることを常に念頭に置いて日々を過ごし、ある程度の成果、社会への役立ちをしていきたいと思っています。

 学習を通して資格を取得され、新しい社会参加の機会を獲得されている方々のご活躍は、本当に立派だと思います。私には想像することが出来ない辛さ、大変さが皆さんの周りにはあるのだと思います。

 私は連合三田会の会長として多くの三田会、そして会員の方々に三田会活動を通して、一度きりの人生に良き刺激、良い学習、そして新しい人脈作りや情報収集との出会いの場に成っていくようにリードしていきたいという思いが有ります。その点で、通信三田会の皆さんとの交流は、多くの新しい情報や刺激と出会いの機会に成ると思います。

 

・・・女性会員が積極的に出席し、参加活動できる三田会の運営を・・・

 最近は若い人の三田会への入会が少ないのです。年配者の集まりの様に思われてしまっているのか、たまたま連絡に沿って三田会に顔を出してみたら、興味が湧く感じではなかったという体験をされてしまったのか。

 会合も似たパターンを毎回繰り返すことが多いこともあるのか、携わっておられる幹事の皆様へのお願いにもなりますが、運営にも変化が必要なのかもしれません。

 特に、近年はITが大きく進歩し、日々の活動がこの新技術やモバイル端末の大きな進歩が促進されている中で、学習の場を得る機会が少ない年配者が気軽に教わり、活用し、興味を持つような集まりや機会を設定することが出来ないものかと、若手に期待というよりも実現をお願いしていきたいと思っています。同時に女性会員の強化充実も必要だと思います。

  年々、女性の社会的な地位向上は目覚ましく、嬉しい流れが始まりました。女性会員に対して、積極的に集まりに参加をして貰うような企画をされて、出席しやすいような流れ、雰囲気を作って下さい。

 

・・・生涯学習や通信教育課程の魅力を後輩学生に示し続けて欲しい・・・

 中高年に成っても学習を継続しているから問題意識やバイタリティーが有り、明るさや魅力を持っているという面も持たれていると思います。私も79歳、人生の88%くらいのところですが、一日24時間に置き換えて考えてみますと、88%=残りは約3時間も残っていますので、まだ夜9時頃、まだまだ時間は残されています。積極的な時間の過ごし方、そしてかなり背伸びをしたストレッチゴールを作っていますが、そのゴールを目指して明るく、頑張っていきます。現在、45歳の方は人生90年時代ではまだ半分、24時間で考えると、まだ昼食時間です。これからの半日に向かってストレッチゴールを設置して頑張っていって下さい。

 病院の看護師や介護福祉士、そして高齢者への補助業務での役立つ仕事をされる方々にとっては、これから先も就職先からの需要は非常に高く、本人がやる気が続く限り職は見つかります。生涯学習、生涯現役、そして生涯収入という道とともに、脳や身体を活用し続けることから健康長寿という成果がほぼ保証されていると思います。やはり生涯学習をしていく重要性、効果は非常に大きいです。

 ぜひ、全国の通信三田会の方々は素晴らしい学習継続という日々の実績を大事にされ、皆様方先輩の「与えられている この一度の人生」での日々の姿が、後輩たちにとって通信教育課程の魅力であり、大事な人生形成につながることを示し続けて頂きたいと思います。多くの後輩学生の通信教育への入学希望が続いていくことを期待しています。

大学のこれから

應義塾大学通信教育部長

大屋雄裕

 

 

 神奈川通信三田会が創立55年目を迎えられるとのこと、おめでとうございます。

多くの塾生・塾員が歴史を引き継ぎ努力を重ねてきた結晶であり、慶應義塾と通信教育課程の伝統を示すものだと思います。

 

 今年4月、財務省の所管する財政制度等審議会から、2040年までに250校・14万人程度の私立大学を削減する必要があるという主張がなされました。文部科学省が経済財政諮問会議に提出した資料でも、私立大学が中心となっている文系の大学が多すぎるという認識が示されています。少子化により、2021年には62.7万人だった大学進学者が2040年には46.0万人と大幅に減少すると推計されているなか、デジタル・グリーンなど経済成長を支える特定の分野や地域社会のインフラを支えるエッセンシャル・ワーカーなどの人材養成を重視する必要があり、それを前提とするとそれ以外の分野における養成能力が過大になっているという前提に立つものです。ここから文部科学省は、理系分野への転換を支援していくことに加え、AI・データサイエンス教育の全分野への導入を促進するといった強化策を講じる方針だとされています。

 一理ある、とは率直に思います。その一方、大学の役割とはこれから社会に出る人材の養成だけなのか、社会の需要だけで高等教育のあり方を決めてしまっていいものかとも思います。通信教育主体でも(本課程のように)相当程度は教えられる文系領域とは違って実験なども必要な理系の学びを遠隔で行なうことには限界があります。大都市中心に立地する私立大学の理系転換を進めていくと学生が都市部に流入する傾向が強まり、地方における技術者不足が加速するのではないかとの疑問もあります。すでに小規模市町村では建築・電気などを扱う技術職員が採用できないという悲鳴が上がっており、その要因の一つとして、地元や近隣地域に理系の高等教育機関がないと指摘されている状況です。これについても、では地方を捨てて都市に皆で移住すればいいと単純に考えるわけにはいかないでしょう。

 いずれにせよポイントは、大学とは何でありどのようにあるべきなのかという課題が問われる時代が来ているということです。戦前日本において、大学とは「國家ニ須要ナル學術ノ理論及應用ヲ敎授シ竝其ノ蘊奧ヲ攻究スル」存在でした(大学令・大正7年)。慶應義塾も、この規定に基づいて大学となった最初の私立学校です。しかし戦後の大学は国家の必要性だけを基準にするものでもなく、目的においてもレベルにおいても多様化を続けてきました。それらに共通する要素は存在するのか、社会はなぜ大学の存在を認め支援すべきかという問いへの答も、そのなかで不明確になってきたということにはなるでしょう。

 

 慶應義塾大学の通信教育課程は、戦後の困難な時代に、高等教育を万人に届けるという目的のもとで発足しました。しかしいまや、インターネットを活用し、見やすく学びやすい10分程度の動画の積み重ねでカリキュラムを進める通信制大学も登場していますし、おそらくは届きやすさという意味ではその方が優れている面があるでしょう。その状況で、テキストを中心として自学自習し、対面での卒論指導を行なうというある意味で古くさい制度を維持している慶應通信の意義はどこにあるのかもまた、問われています。

 この問いにもっともよく答えることができるのは、その学びを経て卒業に至った塾員の皆さんだと思います。皆さんが慶應通信で何を得たのか、それが皆さんの人生や社会に何をもたらしたのかについて深く考え、後輩たちに伝えるとともに社会に向けて語っていただきたいと思っています。

独立自尊と社中協力

慶應義塾塾員センター部長

慶應義塾評議員

栗生 賢一郎

 

 

 

 慶應義塾の創立以来受け継がれてきた「独立自尊」の精神、そして他者を尊重し力を合わせる「社中協力」の精神。この二つの精神は、世代や地域を超えて多くの塾員によって脈々と受け継がれ、「三田会」という唯一無二の共同体を通じて今日まで長く生き続けています。

  通信教育課程の卒業生は、仕事のみならず家庭、育児、介護など多様な環境の中で学びを続け、学業を真にやり遂げた行動力・実行力そして、強い信念を備えた皆様です。一方で、通信教育課程生は通学課程生と異なり、キャンパスライフの中で自然と福澤精神に触れたり、ゼミ・サークルの先輩後輩とのつながりを持ったりする機会が多くありません。その結果、卒業後のつながりが自然に生まれにくい面があり、各地の通信三田会や全国通信三田会、地域三田会、年度三田会への参加が一部の方にとどまっている現状も感じています。

  私が全国各地の三田会に出席し、多くの塾員の皆様と交流するなかで強く感じるのは、「三田会とは義塾の理念を実社会で実践する絶好の場」であるという点です。塾員同士がお互いに卒業を誇りに思い、それを共有し、福澤精神を実践することこそが三田会の最大の価値だと考えています。塾員が生涯にわたり互いを刺激し合い、学び合い、時に支え合うことで、はじめて理念の実践が成り立ちます。

  しかし近年、卒業後20年ほどまでの、いわゆる若手塾員が三田会に参加しないあるいは、入会しても関係が続かないという声が増えています。社会構造の変化や働き方の多様化といった背景はあるものの、本質的には「義塾の理念に触れる機会の不足」と「三田会の価値と魅力が十分に伝わっていない」ことが課題だと感じています。この点こそ、多様な経験を持ち、力強い実践者である通信教育課程の卒業生に担っていただきたい役割でもあります。

  こうした課題の解決に向け、塾では「卒業5年塾員招待会」を企画・実施しました。卒業後5年は通学課程卒業の塾員にとって、自らの立場や将来像を模索する転換期でもあります。そのタイミングで「学びの延長としての人間交際を知ること」と「支援されていた立場から支援する側へ意識を転換すること」を促す狙いがあります。この機会を通じて塾員が義塾や社中とのつながりを再確認し、三田会に参加する意義を実感していただくことが目的です。若手塾員の心に種をまくものであり、その種はいつ芽を出しても良い——これこそが塾で学んだ者が感じる「発育」の姿であると思います。

  そしてこれは通学課程だけでなく、多くの困難を乗り越えて通信教育課程を修め塾員となられた皆様にとっても、同じく大きな節目となる場であることを実感しました。昨年、多くの皆様に「卒業5年塾員招待会」にご参加いただいたことに深く御礼申し上げますとともに、次年度以降も同様に継続されることを心より願っております。

 

  あらためて、三田会は単なる親睦の場ではなく、義塾の理念を社会で実践する「社中の学び場」であり、人生の節目に寄り添う「終生の共同体」ともいえる存在です。神奈川通信三田会は、豊かな経験を有する塾員が集まり、互いの経験を照らし合わせながら新たな価値を生み出す力を持つ会であると実感しております。こうした塾員同士の有機的結合こそ、義塾の理念が社会で実践される姿そのものであり、その重要性は今後ますます高まっていくでしょう。

 

  塾は、福澤諭吉先生の説く実学(実証科学)の精神を通じて社会に貢献する使命を担っています。そして、その担い手は、生涯にわたり理念を体現する塾員の皆様お一人おひとりです。皆様には積極的に関わり、社中協力の中で新たな価値を創出し、その理念を次の世代へ受け継ぐ営みを続けていただきたいと思います。

  神奈川通信三田会の55年の歩みは、その精神を体現してきた確かな証であり、今後も「独立自尊」と「社中協力」の理念を未来へとつなぎ続けていただくことを心より願っております。

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